はじめに
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、卵巣にどれだけ卵子の“ストック”が残っているかを推定する指標です。本稿ではAMHの意味、年齢との関係、数値の見方と限界、検査後の行動をわかりやすく整理します。
1. AMHとは何か
- AMHは卵胞から分泌され、卵巣予備能(=卵子の残数目安)を示す。
- “数”の指標であり、“質”は直接わからない(質は年齢等の影響が大きい)。
- 例えるなら:冷凍庫の容量(数)はAMHで、食材の質は年齢など他要因が決める。
2. 年齢とAMHの関係(目安)
年齢 | 平均AMH値(ng/mL) | 卵巣予備能の目安 |
---|---|---|
25歳 | 4.0〜5.0 | 豊富 |
30歳 | 3.0〜4.0 | 良好 |
35歳 | 2.0〜3.0 | やや低下傾向 |
40歳 | 1.0〜1.5 | 減少期 |
45歳 | 0.5以下 | 閉経移行期に近い |
あくまで平均的な目安であり、個人差は大きい(同年代で2〜3倍の開きも)。
3. 誤解しやすいポイント
- 低AMH=妊娠できない、ではない(数が少なくても質の良い卵子があれば成立しうる)。
- 高AMH=安心、でもない(PCOSなど排卵障害が隠れることも)。
- AMHは不変値ではない(年単位で変化、測定法や体調差の影響も)。
4. AMHを知るメリット
- “時間の感覚”が具体化(年齢だけでは見えない現在地を可視化)。
- 治療・凍結の計画が立てやすい(採卵回数・凍結数・優先度の設計)。
- 先延ばしに伴うリスクを定量化し、納得して選択できる。
5. 検査のタイミングと方法
- 生理周期に関係なく採血可能(いつでも受検可)。
- 結果は概ね2〜5日で判明。
- 健診や婦人科検査の一環で受けられる施設が増加中。
6. 検査後の行動:今すぐ? もう少し待つ?
AMH値 | 行動の目安 | コメント |
---|---|---|
3.0以上 | 情報収集期 | 余裕あり。凍結の検討開始に良い時期。 |
1.5〜3.0 | 計画期 | 1年以内に行動計画を具体化。 |
1.0以下 | 実行期 | 早期の採卵・凍結を優先。 |
数値は目安であり、年齢・既往・他因子(精子・子宮)と併せて医師と総合判断を。
7. よくある質問(FAQ)
AMHが低い場合、凍結する意味はありますか?
あります。卵子の“量”が少ないほど、今ある分を確保する価値が高まります。若い年齢で凍結した卵子は将来の妊娠率に直結します。
AMHが高すぎると問題ですか?
6.0を超える場合はPCOSの可能性があり、排卵障害の検査を併用します。値が高くても医師と計画すれば問題ありません。
何歳で測るのが良いですか?
28〜35歳が一つの目安ですが、“気になった時が最適”。早すぎて損はありません。
一度測れば十分ですか?
定期の再検査がおすすめ。1〜2年ごとに変化を把握すると意思決定が楽になります。
8. コラム:数字の“意味づけ”を変える
AMHは未来を狭める数字ではなく、選択肢を増やすための情報です。“いつか”を“今から準備”に変えるきっかけとして活用しましょう。
まとめ
- AMH=“数”の指標、年齢=“質”の目安として別軸で捉える。
- 早めに知るほど、計画の自由度と実行可能性が上がる。
- 単独の数値で判断せず、年齢・既往・他因子と併せて医師と総合設計を。