はじめに
卵子凍結と胚凍結は、どちらも将来の妊娠の可能性を残す手段ですが、目的・状況・パートナーの有無によって最適解は変わります。本稿は「何を軸に決めるか」を中心に、特徴と向いているケース、ハイブリッド設計、PGTの位置づけ、FAQまでを整理します。
1. 卵子凍結と胚凍結 ― 定義を整理
項目 | 卵子凍結 | 胚凍結 |
---|---|---|
対象 | 未受精卵(精子不要) | 受精済み胚(精子が必要) |
主目的 | 将来の柔軟性の確保 | 移植時の成功率を高める |
法的扱い | 単独所有でシンプル | 共有物で同意が必要 |
卵子凍結は「今は決めきれない」に強く、胚凍結は「今の関係で前に進む」に強い傾向があります。
2. 卵子凍結が向いているケース
- パートナー未定、将来計画が流動的で柔軟性を残したい。
- キャリアや留学・海外赴任などで妊娠時期を先送りしたい。
- 将来的にドナー精子の利用も視野に入れている。
3. 胚凍結が向いているケース
- 現在のパートナーと将来の妊娠を具体的に計画している。
- PGT(PGT-A/PGT-M)を活用し、移植前に情報を得たい。
- 移植時の成功率とスピードを重視したい。
4. ハイブリッド設計(両方を“分けて”凍結)
採卵で得た卵子を割合で分け、卵子凍結と胚凍結を同時に行う方法です。ライフプランの不確実性と成功率をバランスできます。
配分例 | 狙い |
---|---|
卵子60%/胚40% | 柔軟性を広めつつ現実性も確保 |
卵子40%/胚60% | 現パートナー軸で進めつつ将来変化に備える |
5. 判断フレーム:将来像 × コントロール軸
軸 | 卵子凍結が適す | 胚凍結が適す |
---|---|---|
将来像の明確さ | 未定・柔軟にしたい | 明確・現パートナーで進める |
意思決定の自由度 | 個人で完結したい | 二人で合意して進める |
妊娠までのスピード | 将来に備える | 早めの妊娠を目指す |
法的リスク | 単独所有でシンプル | 同意・契約を要し複雑 |
6. ケースで考える
Case A:32歳・海外赴任予定
妊娠時期は未定。若い卵子を保存して柔軟性を確保するため、卵子凍結を選択。
Case B:37歳・婚約中
早めの妊娠を目指し、PGT-Aも検討。胚凍結で移植準備を前倒し。
7. コラム:決めきれない時は“配分”を決める
迷ったまま止まるより、まず採卵を行い、その結果(個数・状態)を見てから卵子と胚の配分を決める方法があります。「どちらか一方」ではなく「どこまで今決めるか」を設計しましょう。
8. まとめ
- 卵子凍結=柔軟性の確保。胚凍結=成功率とスピードの優先。
- 両立(ハイブリッド)も可能。配分でリスクと将来変化に備える。
- 判断軸は「将来像 × コントロール軸」。いまの自分に合う現実解を。