1. 卵巣リジュビネーションとは
卵巣リジュビネーションは、卵巣を刺激し再び卵子の発育を促すことで、妊娠の可能性を広げることを目指します。臨床導入は始まっていますが、位置づけとしては実験的治療(experimental)であり、有効性・長期安全性の検証が続いています。対象は、卵巣予備能の低下、POI、閉経期以降で自分の卵での妊娠を望む方、あるいはIVFで反応が乏しい方などです。
2. 再生医療が拓く3つのアプローチ
【PRP療法】自分の血液から濃縮した血小板を卵巣に注入し、血小板由来の成長因子が休眠中の卵胞を刺激します。経膣エコーガイド下で実施され、軽い鎮静を用いることが一般的。自己血由来のためリスクは比較的低いとされ、AMH上昇やFSH低下、月経再開の報告があります。
【幹細胞療法】骨髄や脂肪組織から採取した幹細胞を卵巣へ投与し、卵巣組織の修復や卵胞発育を促すことを目指します。初期臨床でホルモン指標の改善が報告される一方、エビデンスは限定的で、安全性・有効性の確立はこれからです。
【自家ミトコンドリア移植】自分の体細胞由来のミトコンドリアを卵子に取り込み、エネルギー産生を高めて卵子の質改善を狙う手法です。卵子の“若返り”に近い発想で、臨床段階は初期ですが注目が集まっています。
3. 研究が示す変化
初期の小規模・非対照研究では、月経周期の回復、AMHの上昇やFSHの低下などのホルモン指標の改善、自身の卵子での妊娠成功が報告されています。ただし成功率のばらつきが大きく、症例選択・手技の標準化・追跡期間など、今後の検証が不可欠です。
- 小規模・非対照研究の結果であり、長期安全性の確立はこれから
4. 現時点の注意点
卵巣リジュビネーションは2025年時点で米FDA・日本産婦人科学会ともに未承認の実験的治療です。費用は1サイクル約3,000〜10,000 USD(約46〜150万円)。保険適用外で、海外治療では渡航・滞在費も自己負担となります。PRPは自己血由来でリスクは比較的低い一方、幹細胞採取やミトコンドリア移植は合併症や未知の長期リスクが残ります。
- 治験か自由診療かの確認
- 再生医療等安全性確保法の届出状況(国内)
- インフォームドコンセント内容の精読
5. 先端研究を牽引する医師:Dr. Zaher Merhi
Rejuvenating Fertility Centerの創設者で医療ディレクター。アルバート・アインシュタイン医科大学やNYU医科大学で研修・教職を務め、現在はマイモニデス・メディカルセンターおよび同大学の教授。産婦人科・生殖内分泌/不妊症・高度生殖医療ラボディレクターの3つの米国専門医資格を保有。40歳以上や低AMH症例、幹細胞・エクソソームを用いた卵巣再生、低刺激・自然周期IVF、オゾン療法や低出力レーザーなど“身体に優しい不妊治療”に取り組み、LGBTQ+コミュニティを含む多様な患者に寄り添っています。
6. 試す前に考えたいこと
治療を検討する際は、目的(採卵数の増加/ホルモン値の改善など)を明確にし、成功率の根拠データ、安全管理体制、再投与や合併症対応を含む費用内訳を確認しましょう。期待通りの結果が得られない場合の代替案(卵子提供など)も、事前に検討しておくことが重要です。
- 目的を数値で定義する
- 根拠となるデータを確認する
- 安全体制と費用の全体像を把握する
- 代替プランを用意する
7. まとめ ― 理解して選ぶことで、未来は変わる
卵巣リジュビネーションは確立途上の技術でありながら、閉経や低予備能と向き合う人に“もう一度の挑戦”を与えています。理解は、希望を現実に変えるための力。BetterFreezeは、科学の最前線を中立に翻訳し、納得して選べる環境づくりを支援します。